みんなの乗り越え物語

ワークライフバランスを崩壊させた自己犠牲のマネジメント:心身の疲弊から立ち直るために見つけた新たな働き方

Tags: マネジメント, ワークライフバランス, 自己犠牲, 心身の健康, リーダーシップ

はじめに

マネージャーの皆様、日々本当にお疲れ様でございます。チームの目標達成、部下の育成、上層部との調整など、多岐にわたる責任を負う中で、「自分がやらなければ」「チームのために」と、つい自己犠牲的に働いてしまうことはございませんでしょうか。真面目で責任感の強い方ほど、その傾向は顕著かもしれません。

しかし、そうした働き方が続くと、いつの間にか心身のバランスを崩し、かつての自信を失ってしまうことがあります。私自身も、まさにそのような状況に陥り、深く疲弊した経験を持つ一人です。この記事では、私がどのようにしてその困難な状況から立ち直り、新たな働き方を見つけたのか、そのプロセスと具体的な方法を共有させていただきます。皆様が、ご自身の心身の健康と向き合い、より充実したキャリアを築くための一助となれば幸いです。

困難な状況とその時の心境

私がマネージャーとして働き始めて数年が経ち、チームを率いる責任感は増すばかりでした。特に、任されていたプロジェクトが難航し、部下たちのモチベーションが低下していると感じた時、私は「自分がなんとかしなければ」という思いに駆られました。朝早くから出社し、深夜まで残業するのは日常茶飯事。休日も仕事のメールをチェックし、次の週の戦略を考えていました。

当時、私は自分の仕事に誇りを持っていましたが、徐々に体調に異変を感じ始めました。常に疲労感が抜けず、夜はなかなか寝付けなくなり、朝も体が重くて起き上がることができませんでした。好きなはずの趣味にも全く興味が持てなくなり、友人との付き合いも億劫になっていきました。

一番辛かったのは、かつての自信を失いかけていたことです。プロジェクトは依然として困難を極め、自分自身のマネジメント能力にも疑問符がつくようになりました。「こんなに頑張っているのに、なぜうまくいかないのか」「自分はリーダー失格なのではないか」というネガティブな感情が頭の中を支配し、自己肯定感が日に日に低下していきました。このままでは心身がもたない、という漠然とした不安に常に苛まれていたのです。

克服に向けた思考と行動

心身の限界を感じ始めた私は、何とか状況を変えたいと強く思うようになりました。まず試したのは、仕事のタスクを詳細に洗い出し、優先順位をつけ直すことでした。しかし、「これは自分がやるべき」「部下にはまだ任せられない」といった考えが根強く、結局はほとんどのタスクを自分で抱え込んでしまう状態から抜け出せませんでした。

また、無理にでも休息を取ろうと、週末に予定を入れずに家にこもってみましたが、かえって「休んでいる間に仕事が溜まっているのではないか」という不安に襲われ、全くリフレッシュできませんでした。結局、休むことにも罪悪感を感じ、仕事から完全に離れることができなかったのです。

この頃、私は様々なビジネス書や、メンタルヘルスに関する記事を読み漁りました。タイムマネジメントのテクニックやストレスコーピングの方法について学びましたが、それを実際に自分の仕事に適用しようとしても、目の前の業務量と責任感の重さに阻まれ、なかなか実践に移すことができませんでした。試行錯誤の日々は続きましたが、明確な好転の兆しは見えず、焦りだけが募っていきました。

転機と具体的な克服方法

転機が訪れたのは、ある日、信頼できる先輩マネージャーと話す機会があった時でした。私の疲弊した様子を見かねた先輩が、「君は一人で抱え込みすぎているのではないか」と率直に指摘してくださったのです。その言葉は、私の中にあった「自分がすべてを背負わなければならない」という思い込みに、初めて疑問を投げかけるものでした。

私はその時、「自分は完璧ではないし、一人で全てを解決できるわけではない」という、当たり前の事実にようやく向き合うことができました。そこから、具体的な行動と意識の変化が始まりました。

  1. 「任せる勇気」と「権限移譲の明確化」: これまでは「自分がやった方が早い」と考えていたタスクも、部下の成長機会と捉え、積極的に任せるようにしました。最初は不安もありましたが、マニュアルを整備したり、細かく進捗を確認するのではなく、成果目標と期限だけを明確に伝え、後は部下の裁量に委ねるように意識を変えました。これにより、部下たちが自律的に考え、行動するようになり、チーム全体の生産性が向上していったのです。

  2. タイムマネジメントと「境界線の設定」: 自分の業務時間を厳しく見直し、会議は短時間で終わらせる、メールチェックの時間を決めるなど、より効率的な働き方を導入しました。特に効果的だったのは、「定時後は仕事から完全に離れる」という明確な境界線を設けたことです。緊急時以外は定時後のメールは開かず、休日は仕事に関する一切の情報を遮断するよう心がけました。これにより、精神的な余裕が生まれ、リフレッシュできる時間が増えました。

  3. 「自己ケアの優先順位上げ」と「周囲への相談」: 自分自身の心身の健康を最優先事項と位置づけました。週に一度は必ずジムに通い、休日は家族や友人と過ごす時間を意識的に確保しました。また、抱え込まずに、上司や同僚に自分の状況や悩みを率直に相談することも始めました。彼らからの客観的な意見やアドバイスは、私が陥っていた視野狭窄状態から抜け出す上で、非常に大きな助けとなりました。

  4. 「コーチング的アプローチの導入」: 部下とのコミュニケーションにおいても、一方的に指示を出すのではなく、「どうすれば課題を解決できると思うか」「今回の経験から何を学んだか」といった問いかけを増やすようにしました。これにより、部下たちが自ら考え、行動するようになり、私のマネジメント負担も軽減されました。

乗り越えて得られたもの

これらの変化を通じて、私の心身の状態は劇的に改善されました。長年の慢性疲労から解放され、夜はぐっすり眠れるようになり、朝も意欲的に一日を始めることができるようになりました。趣味の時間も再び楽しめるようになり、充実したプライベートが仕事への良い循環を生み出すようになりました。

仕事においても、大きな変化がありました。私のマネジメントスタイルは、マイクロマネジメントからエンパワーメントへと移行し、チームは以前にも増して自律的で強い集団へと成長していきました。部下たちは積極的に意見を出し合い、困難な課題にも協力して立ち向かうようになりました。

そして何よりも、自己犠牲的に働くことではなく、健全なリーダーシップを発揮することによって、チームを成功に導けるという新たな自信を取り戻すことができました。仕事とプライベートのバランスが取れていることで、精神的な安定と視野の広がりを得られ、より建設的な思考で課題に取り組めるようになったのです。

おわりに

かつて、私も「自分が頑張らなければ」という思いに縛られ、心身をすり減らす日々を送っていました。しかし、その経験を通じて、「一人で抱え込まない勇気」と「自分自身の健康を最優先する大切さ」を痛感しました。

もし今、あなたが同じように仕事で疲弊し、自信を失いかけているのであれば、どうか一人で抱え込まないでください。小さな一歩からで構いません。誰かに相談すること、自分のタスクを見直すこと、そして何よりも自分自身の心と体をいたわることから始めてみてはいかがでしょうか。

この経験が、皆様が困難を乗り越え、自分らしい新たな働き方を見つけるための一助となれば、これほど嬉しいことはございません。皆様の心身の健康と、キャリアの充実を心より願っております。